野口久光 ヨーロッパ名画座

−街の中のもう一つの絵画−

戦前、戦後の映画の黄金時代。
テレビも生まれたばかりで、ラジオも限られた情報しか伝えられなかったころ、
マスメディアの中心は新聞でしたが、一般の人々が映画の情報を得るためには、
街の中に貼られるポスターが唯一と言ってよい広告媒体でした。
この時期、日本においてヨーロッパ映画を中心に配給していた東和商事(のちの東宝東和)に所属し、
約30年間映画ポスターを描き続けたのが、映画、音楽、舞台の評論家としても
著名な野口久光(1909―1994)でした。

当時ほとんどの映画がモノクロ作品だったため、
作品の質を損なわない色彩豊かなポスターにいかに仕上げるか。ヨーロッパ映画の持つ
芸術性、 品格、格調の高さをいかに一枚のポスターに取り込めるかと苦心した野口久光は、
見事にヨーロッパの香り、色調をひとつひとつの作品の中に表現しました。

ヨーロッパ映画全盛のこの時期、われわれ日本人は、野口久光の手によるポスターでまず、
ヨーロッパの文化に触れたのでした。野口久光のポスターは、豊かな表現力で描かれた絵はもちろんのこと、
タイトル文字や俳優の名前まで全て手書きで、作品の雰囲気、内容を的確に表現した
“ 一枚の絵画 ” としての魅力にあふれています。

会では、野口久光が手がけた公開当時のポスター、直筆スターポートレート、書籍・雑誌など
装丁デザイン、レコード・ジャケットデザインなど約500点の収蔵があり、
野口久光の素晴らしいアートの世界をご提供しています。